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夜間高血圧とは?
「昼は正常なのに、夜だけ血圧が高い」—これが夜間高血圧です。就寝中(夜間)の血圧が十分に下がらない、あるいはむしろ上がってしまう状態を指し、日中の診察室血圧や家庭血圧が良好でも、心臓や血管の負担が大きくなることが分かっています。
目安として、夜間家庭血圧が120/70mmHg以上は「高め」と評価されることが多く、24時間血圧計(ABPM)でも同様の基準が用いられます(※個別の病状で目標は異なります)。日本高血圧学会ガイドラインJSH2025では、診断は従来基準を踏襲しつつ、目標血圧として診察室130/80未満・家庭125/75未満が示され、夜間や早朝のコントロールの重要性がより強調されています。
なぜ夜だけ高いと危険なのか(リスクとメカニズム)
本来、睡眠中は自律神経が副交感神経優位になり、心拍・血圧は日中より低下します。ところが夜間高血圧ではこの生理的な「休息」が得られず、心臓・血管・腎臓に負担が継続。次のようなリスクが高まります。
- 心血管イベントの増加:心筋梗塞・狭心症・脳梗塞の発症リスクが上昇。
- 心不全・腎障害の進行:心臓のポンプ機能低下、腎機能の悪化(蛋白尿・eGFR低下)と関連。
- 動脈硬化の促進:血管内皮障害が続き、プラーク不安定化・血栓形成につながる。
また、仮面高血圧(診察室では正常なのに家庭や夜間で高い)に含まれることも多く、見逃されやすいのにリスクは高い点が夜間高血圧の厄介さです。

主な原因:睡眠・生活習慣・病気・薬の影響
睡眠に関わる要因
- 睡眠時無呼吸症候群(OSA):いびき・無呼吸により低酸素→交感神経亢進→夜間高血圧と変動の増大。CPAP治療で改善が期待できます。
- 睡眠の質低下:短時間睡眠、夜更かし、就寝前のスマホ・カフェインで入眠が浅くなると血圧が下がりにくい。
生活習慣の要因
- 夕食の塩分過多・就寝前の飲酒:体液貯留や交感神経亢進を介して夜間の上昇を招く。
- 過度のストレス・夜勤・交代制勤務:概日リズムの乱れは夜間高血圧の温床に。
基礎疾患・内分泌・腎疾患
- 慢性腎臓病(CKD):ナトリウム排泄低下で夜間の負荷が残る。
- 糖尿病・自律神経障害:夜間の血圧調節が破綻しやすい。
- 原発性アルドステロン症・甲状腺機能異常などの二次性高血圧。
薬剤・内服タイミング
- 降圧薬の効果切れ:短時間作用薬のみ、朝一回だけなどで夜間に切れる。
- NSAIDs(痛み止め)・一部漢方・交感神経刺激薬など、血圧に影響する薬剤。

夜の血圧パターン(ディッパー/ノンディッパー/ライザー)
24時間の血圧変動は以下のパターンに分けられます。
- ディッパー:夜間に日中より10〜20%低下(生理的)
- ノンディッパー:夜間低下が10%未満(夜間高血圧の一形態)
- ライザー:夜間に上昇(最もリスクが高いとされる)
- 極端ディッパー:20%以上低下(脳梗塞リスクとの関連が議論される)
同じ平均値でもパターンによりリスクは異なります。ABPM(24時間血圧計)で自分のタイプを知ることが、的確な治療につながります。
どう調べる?(家庭血圧・ABPM・二次性の精査)
家庭でできる測定
- 就寝前・起床時の測定を数日〜1〜2週間記録(安静、座位、同じ条件)。
- 就寝中の自動測定機能付き家庭血圧計も有用(痛みや覚醒が少ないタイプを)。
- 目安:夜間家庭血圧120/70mmHg以上は高め。単回ではなく複数日の平均で評価。
医療機関での評価
- ABPM(24時間血圧測定):日中・夜間・早朝の変動とパターンを総合評価(白衣・仮面の判定にも最適)。
- 二次性高血圧の精査:血液・尿検査、腎エコー、ホルモン検査、睡眠時無呼吸の検査など。
- 臓器障害のチェック:心電図・心エコー(左室肥大)、尿蛋白、眼底など。
診断は総合所見で行います。数値だけで自己判断せず、記録を持参してご相談ください。

治療と生活習慣:今日からできる対策と医療の役割
生活習慣(まずはここから)
- 減塩:1日6g未満を目標。外食・加工食品・汁物は控えめ、だし・酸味・香辛料で工夫。
- 就寝前の行動:アルコールは量と時間を控える(できれば就寝3時間前まで)。カフェイン・スマホは就寝前に避ける。
- 体重・運動:内臓脂肪の減量が夜間血圧に効く。有酸素運動150分/週+軽い筋トレを無理なく継続。
- 睡眠衛生:寝室環境(暗さ・静かさ・室温湿度)を整え、就寝・起床時刻を一定に。
- 禁煙:交感神経刺激と血管内皮障害を是正。禁煙支援もご活用を。
基礎疾患の治療
- 睡眠時無呼吸:減量・体位療法・口腔内装置・CPAPなどで夜間高血圧の改善が期待。
- CKD・糖尿病・内分泌疾患:専門的な管理で夜間負荷を軽減。
薬物療法(医師と相談のうえ最適化)
- 持続時間の見直し:24時間効果の長時間作用薬や配合剤で夜間の切れ目を防ぐ。
- 内服タイミングの調整:一部を就寝前に変更するなど(個別最適:腎機能・日中低血圧の有無で調整)。
- 主な降圧薬:ARB/ACE阻害薬(RA系抑制)、カルシウム拮抗薬(血管拡張)、利尿薬(体液調整)、β遮断薬(交感神経抑制・心拍低下)。
JSH2025の方針に沿い、家庭125/75未満(日中だけでなく夜間も視野に)を目標に、早期介入+継続的モニタリングで心血管イベントを減らしていきます。
受診の目安/緊急性のあるサイン
受診の目安
- 夜間の家庭血圧が複数日で120/70以上が続く。
- 朝の起床時血圧が高い・頭痛や肩こりが強い。
- いびき・日中の眠気・無呼吸を指摘される(OSA疑い)。
- むくみ・頻尿(夜間多尿)・息切れなど心腎のサインがある。
救急受診を考えるサイン
- 激しい頭痛・胸痛・呼吸困難・片麻痺・ろれつ不良などの急性症状。
- 著明な高血圧(例:収縮期180以上や拡張期120以上)に臓器症状を伴う場合。
まとめ・当院のご案内
夜間高血圧は、日中の血圧が良好でも心血管イベントの重要なリスクです。就寝前・起床時の家庭血圧やABPMで見える化し、減塩・睡眠改善・体重管理・禁煙などの生活習慣に加え、薬剤の持続時間・内服タイミングの最適化で「夜の血圧」を確実に下げることが将来の合併症予防につながります。
名古屋市天白区の平針団地診療所(内科・循環器内科)では、JSH2025に基づいた夜間高血圧の評価(家庭血圧記録、二次性高血圧の精査)と、患者さん一人ひとりの生活に合わせた治療計画を提案します。夜だけ高い・朝だけ高い・日内変動が気になる方は、お気軽にご相談ください。
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