心不全とは?原因・症状・治療をわかりやすく解説

心不全とは?(心不全パンデミックについても解説)

心不全について

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態を指します。急性心不全(突然悪化するタイプ)と慢性心不全(長期にわたって進行するタイプ)に大きく分けられます。さらに「左心不全(呼吸困難が主体)」と「右心不全(むくみが主体)」に分類されることもあります。

日本循環器学会「心不全診療ガイドライン2021・2025改訂版」によると、日本における心不全患者数はすでに120万人を超え、2030年にはさらに増えると予測されています。このような急増を「心不全パンデミック」と呼び、医療や社会保障の大きな課題となっています。特に高齢化社会を迎えた日本では、誰にとっても身近な病気といえます。

心不全の主な原因

心不全の背景には複数の病気やリスク因子が関わっています。代表的な原因を整理すると以下の通りです。

  • 高血圧:長期間の血圧上昇は心臓の壁を厚くし、最終的にポンプ機能を低下させます。
  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞):冠動脈の血流不足が心筋を壊死させ、心臓の働きを大きく損ないます。
  • 心臓弁膜症:弁が正しく閉じない・開かないために血液の逆流や流れの障害が起こります。
  • 不整脈:特に心房細動は心拍リズムを乱し、心不全の進行を早めます。
  • 心筋症:心臓の筋肉自体に異常があり、拡張型・肥大型などタイプがあります。
  • その他:甲状腺疾患、腎不全、貧血、先天性心疾患など。

欧米では心筋梗塞に続発する心不全が多いのに対し、日本では「高血圧を背景にした心不全」が目立つ点も特徴です。

心不全の原因

心不全の症状とチェックポイント

心不全は初期症状があいまいで、「年齢のせい」と見過ごされやすい病気です。次のようなサインには注意しましょう。

  • ・階段や坂道で息切れが強くなる
  • ・横になると息苦しい/夜間に呼吸困難で目が覚める
  • ・足のむくみ、体重の急な増加(体液貯留のサイン)
  • ・全身の疲労感や倦怠感
  • ・動悸や不整脈を感じる

国際的な重症度分類として「NYHA心機能分類(Ⅰ度〜Ⅳ度)」が用いられます。Ⅰ度では症状がほとんどなく、Ⅳ度では安静時にも強い症状が出ます。早期に異変に気づくことが重症化を防ぐカギです。

診断と検査方法

心不全は症状だけで診断できず、複数の検査を組み合わせます。

  • 血液検査(BNP・NT-proBNP):心臓に負担がかかると数値が上昇し、重症度の目安になります。
  • 心エコー(超音波検査):心臓の収縮力・弁の状態・心臓の大きさを評価。
  • 心電図:不整脈や心筋梗塞の痕跡を確認。
  • 胸部X線:心拡大や肺うっ血の有無をチェック。

さらに必要に応じてCTやMRIなどの精密検査を行う場合もあります。患者さん自身による家庭血圧測定や体重測定も、診断と管理に役立ちます。

心不全の検査

心不全の治療法(薬物・非薬物・デバイス)

治療はガイドラインに基づき「薬物」「非薬物」「デバイス」に分けて行います。

薬物療法(心不全治療の柱)

  • ARB/ACE阻害薬:レニン・アンギオテンシン系を抑制し、血管を広げて心臓の負担を軽減。
  • β遮断薬:交感神経を抑え、心拍数を下げて心臓の酸素消費を減少。
  • 利尿薬:体内の余分な水分を排出し、むくみや呼吸困難を改善。
  • ARNI(サクビトリル/バルサルタン):心不全再入院を減らす新しい薬。
  • SGLT2阻害薬:糖尿病の有無にかかわらず予後改善効果があると注目。
  • MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬):心筋リモデリング抑制作用あり。

非薬物療法

食事・運動・体重管理が中心です。減塩(1日6g未満)、水分制限(医師の指示に応じて)、適度な運動療法が推奨されます。

デバイス治療

重症例では以下のような機器が使われます。

  • ・ICD(植込み型除細動器):致死性不整脈を予防
  • ・CRT(心臓再同期療法):心室の収縮リズムを整え、効率的な拍出を回復
  • ・心臓移植:国内では症例数は少ないが、最重症例に適応

心不全の治療

生活習慣の改善とセルフケア

心不全は「再入院を繰り返す病気」と言われるほど、慢性経過をたどります。セルフケアが非常に重要です。

  • ・毎日の体重測定で急な増加を早期に察知
  • ・塩分は1日6g未満、水分は指示量を守る
  • ・息切れやむくみが悪化したら受診をためらわない
  • ・ウォーキングなどの軽い運動を継続し、急な無理は避ける
  • ・服薬を自己判断で中断せず、家庭血圧や症状を記録する

 

まとめ

・心不全は高齢化に伴い急増し、「心不全パンデミック」と呼ばれる社会課題
・原因は高血圧、虚血性心疾患、弁膜症、不整脈など多岐にわたる
・症状は息切れ、むくみ、倦怠感などだが見逃されやすい
・診断にはBNPや心エコーなど複数の検査が必要
・治療は薬物・生活習慣改善・デバイス治療を組み合わせる
・再入院予防にはセルフケアと医師との継続的な連携が不可欠

相談先(名古屋市天白区で心不全診療をご希望の方へ)

心不全が気になる方は、まず内科・循環器内科の受診をおすすめします。名古屋市天白区の平針団地診療所では、高血圧・脂質異常症・糖尿病など生活習慣病とあわせて心不全の診療にも対応しています。健診で異常を指摘された方、息切れやむくみが気になる方はお気軽にご相談ください。

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