お酒を飲むと血圧は上がる?飲酒と高血圧・心臓病の関係【循環器内科医が解説】
目次
お酒を飲むと血圧は上がる?

「毎日晩酌をしているけれど、血圧には影響する?」「健康診断で血圧が高いと言われたけれど、お酒はやめた方がいい?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
飲酒と血圧には関係があります。アルコールを飲んだ直後には血管が広がることで一時的に血圧が下がることもありますが、飲酒量が多い状態が続くと、長期的には血圧が高くなる原因の一つになります。
そのため、「お酒を飲むと血圧が下がったから問題ない」と考えることはできません。血圧への影響を考えるときは、飲酒直後の数値ではなく、普段どのくらいの量のお酒を飲んでいるのか、飲酒習慣が長期間続いているのかを見ることが大切です。
また、飲酒は血圧だけの問題ではありません。飲み過ぎによる体重増加や睡眠の質の低下、塩分の多い食事などが重なることで、高血圧をさらに悪化させることがあります。さらに、過度な飲酒は心房細動などの不整脈をはじめ、心臓や血管の病気とも関係します。
飲酒と血圧を考えるときのポイント
・飲酒直後の血圧だけで判断しない
・「何杯飲んだか」だけでなくアルコール量を確認する
・毎日の飲酒習慣を見直す
・体重や食事、睡眠などへの影響も考える
・高血圧がある場合は家庭血圧を継続して測る
特に健康診断や家庭血圧で高い数値が続いている方は、減塩や運動だけでなく、飲酒習慣についても一度振り返ってみることが大切です。
この記事では、お酒によって血圧が上がる理由や飲酒量の考え方、高血圧・心臓病との関係、血圧が高い方がお酒と付き合う際のポイントについて、循環器内科の視点から分かりやすく解説します。
なぜ飲酒によって血圧が上がるの?
アルコールと血圧の関係は、「飲んだらすぐ血圧が上がる」という単純なものではありません。飲酒直後にはアルコールの作用によって血管が広がり、一時的に血圧が低下する場合もあります。
しかし、習慣的に多くのお酒を飲んでいると、自律神経やホルモンなどさまざまな仕組みを介して血圧が上昇しやすくなります。飲酒量が多い状態を長期間続けることは、高血圧のリスクを高める要因の一つです。
さらに注意したいのが、アルコールそのものだけではなく、飲酒に伴って起こりやすい生活習慣の変化です。
例えば、お酒を飲むと食欲が増し、揚げ物や締めの麺類・ご飯などを食べ過ぎてしまうことがあります。また、居酒屋メニューや加工食品、珍味など塩分の多いものをおつまみにする習慣があると、飲酒と同時に食塩摂取量も増えやすくなります。
アルコール飲料にもエネルギーが含まれているため、飲酒量が多ければ体重増加につながることがあります。肥満、特に内臓脂肪の蓄積は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病とも深く関係しています。
また、寝酒としてお酒を飲む方もいますが、アルコールによって寝つきが良くなったように感じても、睡眠の質が低下したり、夜中に目が覚めやすくなったりすることがあります。飲酒は睡眠時無呼吸を悪化させることもあり、睡眠を介して血圧管理に影響する可能性もあります。
つまり、飲酒と高血圧を考えるときには、アルコールそのものの作用だけではなく、「食事・体重・睡眠」まで含めて生活全体を見ることが重要です。
「少量のお酒なら大丈夫」は本当?飲酒量について考えよう
お酒については「ビールなら何本まで?」「ワインなら何杯まで?」と考えがちですが、アルコール度数は飲み物によって大きく異なります。そのため、飲酒量を把握するときは、単純な杯数だけでなく「純アルコール量」で考えることが重要です。
純アルコール量は、飲んだ量とアルコール度数から次のように計算できます。
純アルコール量(g)= 飲酒量(mL)× アルコール度数(%÷100)× 0.8
例えば、同じ500mLのお酒でも、アルコール度数5%のビールと7%の缶チューハイでは、摂取する純アルコール量は異なります。
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、生活習慣病のリスクを高める量として、1日当たりの純アルコール量が男性40g以上、女性20g以上という指標が示されています。ただし、これは「この量までなら安全」という意味ではありません。
飲酒による健康への影響には個人差があり、年齢や性別、体質、持病、服用している薬などによっても異なります。また、飲酒量が少なくてもリスクが高まる病気があるため、単純に一定量以下なら健康上問題がないとは言い切れません。
特に高血圧がある方では、「基準以内だから大丈夫」と考えるのではなく、現在の飲酒量を把握したうえで、血圧の状態に応じて減酒を検討することが大切です。
ポイントは「自分がどのくらい飲んでいるのか」を知ることです。
缶や瓶にはアルコール度数が表示されています。まずは普段飲んでいるお酒の量と度数を確認し、純アルコール量に置き換えてみると、飲酒習慣を客観的に振り返りやすくなります。
また、一週間分をまとめて飲むような飲み方や、一度に大量のお酒を飲むことも避ける必要があります。飲酒量だけではなく、飲み方そのものにも目を向けましょう。
毎日の飲酒で注意したい高血圧以外の影響

飲酒習慣を見直す理由は、血圧だけではありません。アルコールは全身に影響するため、飲酒量が多い状態が続くと、さまざまな健康問題につながる可能性があります。
体重・生活習慣病
アルコールにはエネルギーがあり、おつまみや締めの食事も加わることで摂取エネルギーが多くなりやすくなります。体重増加や肥満は、高血圧だけでなく糖尿病や脂質異常症などとも関係します。
肝臓への負担
アルコールは主に肝臓で代謝されます。過度な飲酒を長期間続けると、脂肪肝やアルコール関連肝疾患などにつながる可能性があります。健康診断で肝機能の異常を指摘されている方は、飲酒量を見直すことが重要です。
睡眠への影響
「お酒を飲むと眠れる」と感じる方もいますが、飲酒は睡眠の質を低下させることがあります。また、睡眠時無呼吸症候群がある方では、飲酒によって症状が悪化する場合があります。
心臓・血管への影響
過度な飲酒は高血圧だけでなく、不整脈など循環器疾患とも関係しています。高血圧や糖尿病、脂質異常症などが重なると、心血管疾患のリスクを考えるうえでより注意が必要です。
健康診断で複数の項目を指摘されている場合、「血圧は血圧」「肝機能は肝機能」と別々に考えるのではなく、飲酒や食生活、体重など共通する生活習慣が関係していないかを振り返ることが大切です。
飲酒と心臓病の関係|不整脈にも注意
循環器内科の視点から飲酒習慣を考えるとき、高血圧とあわせて注意したいのが不整脈です。特に飲酒と関係することが知られている不整脈の一つに心房細動があります。
心房細動とは、心臓の上側にある「心房」が細かく震えることで、脈が不規則になる不整脈です。動悸や息切れ、胸の違和感を感じることがありますが、自覚症状がほとんどなく、健康診断や診察時の心電図で偶然見つかることもあります。
心房細動で特に注意が必要なのは、単に「脈が乱れる」だけではない点です。心房内の血液がよどむことで血栓ができ、それが脳の血管へ流れると脳梗塞を引き起こす可能性があります。そのため、心房細動が確認された場合には、年齢や高血圧、糖尿病などのリスクを評価しながら治療方針を考えます。
大量に飲酒した後などに動悸や不整脈が起こることもあり、飲酒量が多い方では飲酒習慣そのものを見直すことが重要です。
また、高血圧が長期間続くこと自体も心臓への負担となります。高血圧によって心臓の筋肉が厚くなったり、心臓の機能に影響したりすると、将来的な心不全などのリスクにもつながります。
飲酒・高血圧・不整脈は別々に考えないことが大切です。
毎日の飲酒習慣がある方で、血圧が高い、脈が飛ぶ、動悸がするなどの症状がある場合には、飲酒量の見直しとあわせて循環器内科で一度相談しましょう。
特に飲酒後に「心臓がドキドキする」「脈がバラバラになる」「胸が苦しい」といった症状を繰り返している場合には、単なる酔いの影響と決めつけず、不整脈が起きていないか確認することが大切です。
血圧が高い人がお酒を飲むときに見直したいポイント

高血圧を指摘されたからといって、自己判断で極端な制限を始めるのではなく、まずは現在の飲酒習慣を把握することが大切です。「自分はそれほど飲んでいない」と思っていても、毎日の飲酒を合計すると想像以上のアルコール量になっていることがあります。
✓ 普段の飲酒量を把握する
何杯飲んだかだけでなく、お酒の量とアルコール度数を確認してみましょう。
✓ 飲酒量を少しずつ減らす
毎日何本も飲んでいる場合は、量を減らすことから始めます。無理なく続けられる方法を考えることが大切です。
✓ 飲まない日を設ける
「毎日飲むのが当たり前」になっている方は、飲酒しない日をつくるなど、習慣そのものを見直してみましょう。
✓ おつまみの塩分にも注意する
漬物、干物、加工肉、スナック菓子など、塩分の多い食品が飲酒とセットになっていないか確認しましょう。
✓ 寝酒を習慣にしない
眠るためにお酒を飲む習慣は、飲酒量の増加や睡眠の質の低下につながることがあります。
✓ 降圧薬を自己判断で変更しない
「お酒を飲む日は薬を飲まない」など、自己判断で降圧薬を中止・調整することは避け、飲酒について気になる場合は主治医へ相談してください。
また、お酒を減らすときには、「ビールを別のお酒に変えればいい」という考え方ではなく、摂取する純アルコール量そのものを減らすことがポイントです。ノンアルコール飲料などを活用する方法もあります。
高血圧の管理は、飲酒だけで決まるものではありません。減塩、食事、運動、体重、睡眠なども含め、自分に改善できる生活習慣がないか総合的に見直しましょう。
お酒を減らしたら血圧は下がる?家庭血圧で確認しよう
習慣的に飲酒量が多い方では、飲酒量を減らすことが血圧管理につながる可能性があります。ただし、血圧は飲酒だけで決まるものではなく、塩分摂取量、体重、運動、睡眠、ストレス、遺伝的な要因などさまざまな影響を受けます。
そのため、「お酒を減らしたのに数日で血圧が変わらなかった」と判断するのではなく、生活習慣の改善を続けながら家庭血圧を継続的に記録することが大切です。
家庭血圧を測る際には、毎日できるだけ同じ条件で測定しましょう。
- 朝・晩など決まったタイミングで測る
日によって測定条件が大きく変わらないようにします。 - 測定前に安静にする
入浴や運動、飲酒直後などは避け、落ち着いた状態で測定しましょう。 - 血圧と一緒に飲酒量も記録する
「飲んだ日」「飲まなかった日」やおおよその飲酒量を記録しておくと、生活習慣を振り返りやすくなります。 - 記録を診察時に持参する
家庭での血圧記録は、高血圧の診断や治療方針を考えるうえで重要な情報になります。
また、飲酒量を減らしても高い血圧が続く場合には、「まだ生活習慣が足りない」と自己判断で様子を見続けるのではなく、一度医療機関へ相談しましょう。
高血圧の程度や年齢、糖尿病・脂質異常症・腎臓病などの持病によっては、生活習慣の改善だけでなく薬による治療が必要な場合があります。
血圧が高い状態が続く場合は循環器内科へ|まとめ
お酒を飲んだ直後には一時的に血圧が下がることもありますが、習慣的な過度の飲酒は長期的な血圧上昇につながる可能性があります。そのため、高血圧を指摘されている方は、食事や運動だけでなく飲酒習慣についても振り返ることが大切です。
また、飲酒は高血圧だけではなく、体重増加や睡眠の質の低下、不整脈などにも関係します。特に飲酒量が多い方では、「お酒だけ」の問題として考えるのではなく、生活習慣全体を見直しましょう。
こんな方は一度医療機関へ相談しましょう
・健康診断で高血圧を指摘された
・家庭でも高い血圧が続いている
・毎日の飲酒量が多いと感じている
・飲酒量を減らしても血圧が高い
・高血圧に加えて糖尿病や脂質異常症がある
・飲酒後に動悸や脈の乱れを繰り返す
特に、非常に高い血圧とともに強い胸痛や呼吸困難、意識障害、手足の麻痺、言葉が出にくいなどの症状がある場合には、心筋梗塞や脳卒中など緊急性の高い病気の可能性があります。そのような場合は通常の外来受診を待たず、119番通報を含めた緊急受診を検討してください。
血圧管理の目的は、単に健康診断の数値を正常にすることではありません。高血圧によって将来起こり得る脳卒中や心筋梗塞、心不全などを予防することが重要です。
名古屋市天白区の平針団地診療所では、高血圧をはじめ、不整脈や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病・循環器疾患の診療を行っています。「お酒をどのくらい減らせばよいか分からない」「健康診断で血圧を指摘された」「飲酒後の動悸が気になる」といった場合も、お気軽にご相談ください。
